僕の部屋は治安が悪い

僕の住んでいる部屋は治安が悪い。

まず部屋は一階だ。一般的に一階は泥棒が入りやすいと言われるが、引き換えに階段を上がらなくて良い。

一応、角部屋なのだがそれが余計にたちが悪い。

平面図を書くとこうだ。

窓を開けると自転車置き場だ。

カーテンという概念は七年前に捨てた。すりガラス越しとはいえ、自転車を止める人と距離が近い。その距離1m。部屋にいるときはすぐ真横で自転車を誰かが止めていることになる。向こうからどう見えているかは知らない。

そして風呂には換気扇がない。

風呂の窓を全開にすると自転車を止める人や、歩いてる人と目があう。向こうは見たくないだろうが、開けないとこっちは湿気が大変なんだ。だから半開にするのだが、ちょっとした拍子ですぐにバタンと全開になる。

世間平均的な目線でいうと色々とヤバめな物件かもしれない。

しかし、僕自身は部屋に対してのこだわりが薄いため、さほど気になっていない。

部屋を選ぶ時、四部屋くらい不動産屋さんと回った。この部屋にしますと言った時、「えっ、マジですか?ここ?」と信じられないものを見るように驚いていたのをよく覚えている。僕の決め手は場所と押入れの広さだけだったのだ。

屋根があればいい、というのは大げさだがそんな気持ちだ。

突然の来訪者

これを言うと驚かれるのだが、何年か前まで自分が部屋にいるとき、鍵をかける習慣がなかった。

鍵ってものは「部屋に誰もいない時にかけるもの」だと思っていたからだ。これは田舎で生まれ育った影響もあるのかもしれない。

ある日のことだ。

僕がソファでくつろいでいると呼び鈴が鳴った。アマゾンなどの配達の予定があるとき以外は絶対に出ないことにしている。当然、居留守を使う。

もし今後、一人暮らしをする予定がある人は肝に命じたほうがいい。友達や配達のほぼ確実な予定の呼び鈴以外は出ちゃダメだ。プラスになる出来事なんかまずないと断言しよう。ほとんどが胡散臭い営業か、宗教の勧誘だ。

呼び鈴は鳴り続ける。

なぜかうちの呼び鈴は部屋の狭さに対して音が大きすぎる。不快というかびっくりする。しつこいな、と思いながらも僕はそのままソファに寝転がって本を読んでいた。

呼び鈴は収まった。しかしまだごそごそと玄関にとどまっている気配がある。ここで油断して生活音を出してしまうと台無しなので僕は息をひそめたままだ。

がちゃがちゃ。

えっ?

まさかドアノブを回してる?

がちゃっ。

時が止まった。ドアがあっけなく開く。

玄関を開けて顔を出したのはアジア系の外国人。年は二十歳くらいだろうか。

よくわからない表情のまま、足を玄関に踏み入れてきた。

僕はわけがわからず

「ちょ!ちょ!ちょ!!何!何!?何!?」

「???」

向こうも戸惑っているようだ。日本語も通じない。

「とっ、とにかく入ってくんな」

といって無理やり玄関から追い出して鍵を閉める。

なんだったんだろう。

覗き穴から廊下の様子を見る。男はまだそこにいて何やら電話をかけている。

やがて他の部屋の玄関が開いて男はその部屋に入っていった。

どうやら単純に友達の部屋と間違っていたいたようだ。(住んでるのは外国の方の方が多い)

にしても勝手に開けて入ってくんなよ。

もし、不在かどうかを確認してからの空き巣だったら今頃どうなっていただろうか。

この出来事以来、むしろ僕は自分が部屋の中にいるときに鍵をかけるようになった。

 

よくゴミが投げ捨てられる。

 

もう一度、部屋の位置関係をみてみよう。

前の道は、JRの駅から地下鉄へ歩く通り道となるので、それなりに人通りがある。深夜でも酔っ払いがガヤガヤ通る。

部屋から外までの間には、ベランダというか、物干しのスペースがある。

部屋の中からみるとこんな感じだ。洗濯機は外置きだが、意外に壊れず何年も頑張ってくれている。

外から見るとこうなっている。一応、道との間は植栽に覆われていて、部屋の中は見えないようになっている(多分)

ただ、この植栽にゴミがやたら捨てられるのだ。

例えばこう。

マクドナルドの持ち帰りを食べながら歩いてて、ちょうどここで食べ終わったのだろうか。ゴミもテイクアウトしてほしい。

この青いビニールは、本屋さんか薬局のどちらかだろうか。

どちらも近くにあるので判別しがたいが、確か本屋さんの袋だった気がする。

きっと勤勉な人なのだろう。真面目な大学生かもしれない。

でも捨てるな。

木を隠すには森の中というが、この植栽の茂みにズボッと隠すと埋もれてゴミが見えなくなる。きっとそれが捨てる行為のハードルを低くしているのだろう。

空き缶は頻繁に捨てられるのでもう珍しくもなくなった。

ちびまる子ちゃんのお父さん、ひろしは言っていた。

「美味いもんも毎日食べたら美味いもんじゃねえんだよ」

いや、違う。そういうことじゃない。ゴミになれちゃいけない。

こういう人はきっと自転車のカゴにも捨てるんだと思う。

空き缶は小さいから罪悪感が薄いかもしれないが、捨てちゃダメだ。

ん?この右側の箱はなんだろう?

アイコスだ!

そうか。コンビニも近くにある。そこで購入して歩きながら不要な箱を捨てたというわけか。なるほどな。我ながら名推理だ。

ってテンションあげてる場合じゃない。

タバコを吸わない周囲の人に配慮するんなら僕の部屋にも配慮しろよ。

しかし、買ったばかりのアイコスは多分充電しないと使えないんじゃないかな。フフフ、詰めが甘いな。というか捨てるな。

これはっ・・・!?

バトミントンの羽だ。

どういうシチェーションでこうなったのだろう。大きさ的には確かに植栽の葉の間もフェンスの隙間も抜けるかもしれないけど!

わざとなのか、たまたまなのか分からないのでまあ、よし?としておこう。

もし子供たちが遊んでいて、たまたまうちのベランダに迷い込んだ可能性もある。

「中島、お前が謝りにいけよ」

「嫌だよ、磯野、お前がいけよ」

なんて光景が浮かんでしまった。これはなんか許さざるを得ない。

なお、このベランダは梅雨時になると謎の草が育ち、しまいには謎の花が咲く。

室外機から出る水がちょうどいいみたい。自然は偉大だ。

傘だ。

うん。途中で晴れてうっとおしくなったんだろうね。

傘だけに植栽に挿しやすいし。ってやかましいわ。

これは僕の部屋の前ではないけど何か道具箱のようなものが捨てられている。

ほんとうになんだろう?バッテリー?謎だ。

深夜の恋煩い

誰かが部屋の横で電話をしているようだ。

僕は寝床が道側だ。壁があるとはいえ、実質1mくらいしか離れていない。当然内容はまる聞こえだ。

話しているのは若い男性。

電話の相手はどうやら彼氏持ちらしい。それでも俺の方がいいぜ!ってことを臆面もなく口に出して口説いているようだ。僕にはない概念だと思った。タフガイ。

すぐ終わるだろうと思ってほっておいたが、電話は一向に終わりそうにない。

時刻はすでに深夜の2時だ。ちょっと眠れなくてイライラしてきた。

でも注意するのもめんどくさいな。それにこっちは家が知られるわけだし、トラブルになった時のリスクが高すぎる。

そうこうしていると自転車でおまわりさんがやってきた。僕の部屋の前の道は巡回ルートに入っているらしくよく見かけるのだ。これで解決かと安堵した。

「君、何してるの?」おまわりさんが若者にいう。いいぞ。

「いや、電話してるだけっす」

「ふ〜ん、そう。まあ、早く家にかえりなよ」

そう言うだけでお巡りさんは去って行ってしまった。

違う!ここに被害者がいるんだよ!

映画でこんなシチュエーション見たことあるぞ。おーい、行くな、助けてくれ!

「えっ?いや、なんかおまわりさんに話しかけられてさ。ところでさ〜」

いかん。ほっておくと朝まで続きそうだ。

もう限界だ。さすがに僕は窓を開けて言った。

「ごめんだけど、ほかで話してもらっていいかな」

変に刺激しないよう、できるだけ優しい言葉を選んだつもりだ。

自分が座っていた真横の窓が、突然開いたので若者は少し驚いたようだ。

そりゃ、外からだとわずか1m向こうで人が寝てるなんて想像できないだろう。

「・・・ああ、まあ、いいっすよ」

と言って、めんどくさそうに立ち上がり去った。

「まあ、いいっすよ」

「まあ、いいっすよ」!?

 

あれ?僕がお願いした立場!?向こうがお願い聞いてあげたほう?なんか色々おかしいぞ。

色々納得ができない思いを悶々と抱えてやっと眠ることができた。

 

なんて、ろくな思い出もないこの部屋だが、それでもすでに7年くらい住んでしまっている。

来年はもう引っ越そうかと思ってはいるけど。

洗濯物が風で飛んだのか、靴下がせつない。ちゃんとペアであることが何かしらのストーリーを感じさせる。

主にツイッターにいます→@kenihare 無言フォロー嬉しいです。


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