残雪の北アルプス

「白山、やっぱり綺麗ですね〜」

北穂高の頂上で出会った人が言う。

僕は白山にまだ登ったことがないので、ほほう、あれが白山か。めっちゃ雲海出とるな、という感想だった。

「いや、白山がこんなに綺麗に見えるとはっ!」

「何回白山言うんですか笑」

きっとこの方にとって、白山には何らかの思い出があるのだろう。

こんな風に、山では知らない人同士でも気軽に話がはずむ。ええこっちゃ。

ここは標高3190m。北アルプス、北穂高岳の山頂だ。

 

ゴールデンウィークの北アルプスへ

2019年のGW。世間は10連休というぶっ飛んだ休みだった。

僕はといえば、職業柄10連休なわけがなし。とはいえ多少は休みの融通が効く。

今回は姫路の親のところへも行かず、本当に山の予定しかいれなかった。

予定はざっくり。上高地から涸沢へ。涸沢を拠点に奥穂高、もしくは北穂高へ登る。

天気・状況によっては涸沢で終わり。頂上は諦めることも余裕で視野に入れていた。

当初、連休前半に出発の予定をしていたが、天気が怪しいので延期。その後、4月30日から長野に入る予定だったがこれまた天気が微妙。

検討した結果、さらに1日後ろにずらすことにした。

先に言うとこの判断は正解だったといえよう。当初のまま行っていたら雪崩に巻き込まれていたかもしれない(連休序盤、涸沢で表層雪崩があった)

5月1日。仕事を終え、あずさに乗って長野に向かう。

塩尻で同行者と落ち合い、その日は健康ランドで3時まで仮眠。余談だが健康ランドでは二人とも他の人のいびきに大いに悩まされていた。

そして5月2日。

夜明け前のさわんど駐車場。

上高地は規制のため、直接個人の車で入ることはできない。ここ、さわんどの駐車場に駐めてバスかタクシーで向かうことになる。

荷物を整える。スコップ?と思うかもしれないがこれはテントを張る時に使うのだ。

ザックのキャパを余裕で超えた。どうしても雪山は荷物が多くなる。無理やり押し込んで蓋を閉める。

同行者に言わせると、僕が異常にパッキングが下手なだけらしい。そんなの信じないぞ。

四人揃うとバスよりタクシーの方が早くて安い。

みんなそれを知っているので、出くわした二人組と一緒にタクシーで上高地へ向かった。

スタートの上高地。かなり久しぶりに来た。二年ぶりくらいかも。

まずは登山届を提出。係りの人が「今日は雪が多いから本当に気をつけてね」と声をかけてくれる。

靴紐を締め直したり、ストレッチをしたり。

さて、出発だ。

河童橋。上高地自体は観光地なので、もう少し時間が経つと観光客が増えるだろう。

平坦な道をゆっくり歩いていく。

うん。少し雲があるけどいい天気だ。

まず平らな道を歩いて身体を慣らすことができるこのルートが僕は好きだ。

徳沢ロッジというキャンプ場を通過。

この場所でも少し雪が残っている。

徳沢は通過したことしかないのだけど、ここに一度泊まってみたいという声はよく聞く。僕も日数に余裕があれば泊まってみたけど、なかなかね。

 

ここはソフトクリームが有名なんですよ。(帰りに食べた)

川沿いの道。遠くまで景色が抜けて気持ちがいい。

そして横尾という場所に到着。小屋にも泊まれるしテントも張れる。

ここで一区切り。

さらっとここまで来たような感じだが、実は上高地からここまで10kmある。

ここで少し休憩。お湯を沸かしてコーヒーを入れた。

ゆっくりしたあとは再び涸沢へ向けて出発である。

この橋を渡ると少し世界が変わるのだ。

注意喚起。そしていきなり雪道になる。

しばらくは林の中。さほど大きな起伏はない。

ある程度進んだところでアイゼンを装着。これで基本的に滑る心配はない。

これは屏風岩という。たまにクライマーが登っている時がある。

本谷橋という場所に到着。

夏に来たことがあるのだが、本来ここは川が流れていて橋がかかっている。全て雪に埋まっていたので最初ここが本谷橋と信じられなかった。

夏に撮影した写真が残っていた。本来このような場所なのだ。

ここからいよいよ本格的な登りになる。

登る。登る。

ザクザクと雪を踏みしめひたすら登る。登る。

写真ではあまり傾斜がないように見えるが、じわじわじわじわ疲労がたまる。

景色は最高なんだけどね。

これは振り向いて後ろを撮影した写真。この長い登りはみんなしんどそう。

あの鯉のぼりは山小屋の目印!

やっと着いた!涸沢ヒュッテ。

ついたぞー!なぜかやたら元気。

まずはテントの受付を済ましてトイレに。テントは一泊1000円。

ここのトイレは綺麗だし、便座は暖かいし、トイレットペーパーもあるしかなり快適な山小屋だ。

さて、ここからもまだちょっと大変。雪の上にテントを張るにはまず穴を掘って整地しなければいけない。

腰が死ぬ。

そしてテントの周りに雪の壁を作り風よけとするのだ。スコップを持って来ていたのはこのためである。


完成。

結構掘ったつもりだったんだけど、周りのテントと比べると深さも壁も全然甘い。経験の差が出た。

猛者が作るとこうなる。もはや城だ。三匹の子豚だと最強の位置だろう。

そろそろ日が暮れる。

お腹が減ってきた。夕食どきだ。

今夜はキムチ鍋。最高。

寒い中これが染み入るように美味い。なんかちゃんとしたものを食べた気がするな。

僕が一人の時は、温めるだけのカレーや簡単なラーメンなど味気ないものになる。

そろそろ夜だ。ここから左に登ると奥穂高、右に登ると北穂高となる。

毎度、星空撮影を行うのだが、今回はちょっと迷った。なぜか。単純にめちゃめちゃ寒いのだ。

星を撮影したことがある人ならわかると思うが、星空の撮影は長い時間じっと待っていなければならない。これはシャッターを何十秒も開いていたり、感度などを試行錯誤しながら撮るからだ。忍耐力との勝負とも言える。

山小屋で見た夜の気温。0.5度。ましな方だと思う。

それでも僕は頑張りましたよ。

綺麗にテント場と山が写せたと思う。

この時期だからテントの数がいまいち少ないが、夏、秋のピークの時はものすごい数のテントが並ぶ。これも夏の写真があったので張っておく。

夏のある夜。テントがカラフルなゼリーみたいだ。

涸沢はこんな写真が撮れるから好きなのだ。

星空。

もっと遅い時間だったら天の川も視れたかも。でも夜更かしはできない。なんたって明日は3時起きだからね。

ほんの30分ばかり粘っただけなのに足先がかなり冷えた。

テントの中でシンプルだが奥深いボードゲームをして21時くらいに就寝。

奥穂高アタック

3時くらいにはなんとか起きれた。

しかしなんだかんだグズグズ。結局出発は5時前になってしまった。なんてこった。

夜が明ける。

みんな外に出て何をしているかというと、モルゲンロートを待っているのだ。

モルゲンロートとは日の出の光が山々を赤く照らす現象のことだ。それはそれは綺麗に赤く染まるんだけど、その時間はほんのわずか。早起きした人へのご褒美といえる。

ちなみにドイツ語が語源でモルゲンは朝、ロートは赤色の意味だったはず。

しかし、僕らはそれを待たず一足先に登り始める。ペースが遅いからね。

登りながら気にしていたが、モルゲンロートは本日は見れず。雲がでていたからなあ。

雪の斜面をひたすら。ただ、ひたすら登っていく。

少し登って振り返ってみる。まだこれだけしか登ってないのかよと気が遠くなる。

疲れた。それでもピッケルとアイゼンをなんだかんだ(割愛)して一歩ずつ登る。

先に登った人の踏み跡に沿って登ると少し楽。

朝の雪は締まっていてアイゼンの刃がよく効く。

ちょっと休憩。ふう。しんどい。

かなり上がってきた。上がすぐそこに見えるけどこれがなかなか遠い。

もうすぐだ。


やっと上まできた。

穂高山荘に到着。ここで一休みを入れる。

実は頂上まではここからが本番。小屋のすぐ横の取り付きから頂上まではなかなか危険な難所となる。

奥穂高の取り付き。まずはこれを上がってさらに奥に進む。

写真だと遠近感がよくわからず大したことのないように見えるかもしれない。しかし右下のオレンジのが人間一人の大きさと見れば伝わるだろうか。

ここで僕はカメラをしまったので危険箇所の写真は残念ながらない。

ハッキリ言って写真を撮る余裕はないのだよ。

でも同行者さんが最初のハシゴの部分を上から撮っていてくれた。

これは下から撮った写真。ピッケルとアイゼンを駆使してよじ登っていく。

僕はここがかなり怖かった。今更だけど人並みに高所恐怖症なんだよね。

写真はないが細い道やもう一回ピッケル・アイゼンをがっつり使用して登る箇所なんかを経て・・・

いきなり山頂になってしまった。

絶景が待っていた。

右のほうにニョキッと出ているのは槍ヶ岳。

これは西穂高へと進むジャンダルムと言われる有名な難所。

ジャンダルム、声に出したい日本語。いつか行きたいとは思ってはいるけど・・・どうだろう。誘われない限り自分では行けないな。

風は強いし、頂上は広くないので早々に下山することに。

そして下山途中の写真もない。登りより降りる方が危ないし怖い。当然カメラを出す余裕はない。

小屋まで無事に降りてきた。危険箇所を過ぎた時の安堵たるや。

鎖場やハシゴの箇所で渋滞に巻き込まれずにすんだ。グズグズしてペースも遅かったとはいえ、日の出を待たずに早く出発したのが功を奏したようだ。(人気のある山ではこういった難所で渋滞が起きる)

小屋に降りてきたヘリを間近で見ることができた。山岳隊員を乗せて颯爽と飛び立つ。


下山は雪が緩んでずるっと滑りやすい。気をつける。

昼過ぎにテント場に戻ってこれた。安堵&安堵。

さーて飯だ飯だ。

今日のお昼はヒュッテのテラスで。この景色でごはん三杯いけるね。

降りたら昼はカレーを食べようと決めていた。同行者さんはビールだけがずっと楽しみだったようだ。

無事に戻ってこれたことに乾杯を。

このテラスで相席になった若い女性の方。色々話しを聞いているとかなりの猛者でびっくりした。

さて、ここ涸沢でもう一泊することは決まっている。明日をどうするか。

選択肢としては、

①ゆっくり起きて余裕を持って上高地へ戻る

②北穂高も登る

僕は奥穂に登れたので実はもうかなり満足していた。実は①でもいいかなと思っていた。

しかし明日も天気は快晴の予定。

多少疲れは出ているけど行きますか、なんて話して②北穂高も登ろうということに。まあ、途中で引き返してもそれはそれで。

というわけで、明日も3時起き決定である。

北穂高アタック

朝だ。

昨日の反省を活かして今日はグズグズせずに出発の準備をする。僕なんか起きた第一声が「よし!北穂登りましょう!」って言ったくらいだからね。ちょっと異常かもしれない。

この右側の凹んでいる部分をひたすら登って行くのだ。

まだ4時前だが皆さんだいたい起きて準備をしている。

よし、昨日よりは早く出発できたぞ。

やることは昨日とほぼ同じ。雪の斜面をただひたすらに登って行くのだ。

なんだか昨日より登りづらい。

おそらく踏み跡が定まっていなくて凸凹の道をのぼっているからだ。

足を止める。今日はモルゲンロートが見えた。

ただ、季節や条件があえば、もっともっと赤くなるはず。


上が見えているからすぐかな?なんて思っちゃうけど実際はかなり時間がかかる。

自然のパノラマが距離感を狂わせる。

昨日より斜度がきつい。

ピッケルとアイゼンで踏ん張らないとそのまま滑り落ちてしまうような箇所が何度かあった。

完全に日が昇った。一気に気温があがる。

お分かりだろうか。横を見るとすごいところを歩いている人たちがいた。

これはバリエーションルートといって、通常の道ではない箇所を歩いている。

ロープワークなど高度な技術を要する。ようはすげえ人たちだ。

やっと上まで辿りついた。ここまでくれば山頂はすぐそこ。

この真下あたりの箇所。何これ?壁?と思うくらいの角度で怖かった。岩ではなくても怖いもんは怖い。

ここで昨日誰かテントを張っていたみたい。絶景だけど風がすごかっただろうな。

山頂は狭い。

知らない方と冒頭のように綺麗ですねえ、綺麗ですねえ、って喜びを分かち合っていた。

この場所が槍ヶ岳が綺麗に見えますよ!と教えてもらい撮影。実は崖のギリギリのところだったのでかなり怖かった。

白山。真ん中に横切る白いのは雲海です。

さて、続々と登頂してくる方もいる。長居は無用だ。早々に下山する。

日が昇ると雪が溶け始めてグズグズになる。

今回は斜度がきつい箇所があるので、そこを降りるのが怖い。

慎重に慎重に降りる。

危険箇所を超えてしまうと、あとはもうザクザクおりるだけだ。

安全な場所では尻シェードと呼ばれる方法で降りてみた。

これはその名の通り、お尻で雪面をソリのように滑り降りる方法だ。これを使うとあっという間に降りれるチート技だ。

ただ、僕は上着をちゃんとズボンの中に入れていなかったせいか、パンツの中に雪が入ってびっしゃびしゃになっていた。

よし、今日も無事に帰ってきたぞ!

少し休んでテントを片付ける。お世話になりました。

暑かったので半袖だ。

あとはサクサク降りるだけなのだが、足が痛くて下りの方がきつい。何個か水ぶくれができているようだ。

上高地に向けてなんとか歩く。

やっと横尾に到着。しんどかった!

とはいえ、上高地まではまだ10kmあるんだよ・・・。

 

楽しさしかなかった

思い返しても、あれ?これで二泊三日?というくらいあっという間だった。同行者さんには車までだしてもらって世話になりっぱなしで本当にありがたい。

今回、天候によっては本気で涸沢で終わってもいいと思っていた。しかし天候に恵まれ無事に二座の頂上まで登ることができた。ピークハントにこだわってるわけではないのだけれどやっぱり本当に嬉しかったねえ。

ちなみに日焼け止めを塗らなかったので、顔の日焼けがものすごいことになって会う人すべてに突っ込まれた。

帰り道、上高地付近では猿が可愛かった(餌をあげちゃだめです)

主にツイッターにいます→@kenihare 無言フォロー嬉しいです。


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