一人箱根駅伝 前編

※これは2016年に書いてたけどボツになったやつが発掘されたので掲載したものです。

2016年6月某日。正午。

僕はなぜか大手町にいた。

足下にはあの箱根駅伝のスタートライン。
04_スタートライン
これからあの箱根駅伝を走るのだ。なぜか一人で。

話は少し前の雨森編集長との打ち合わせにさかのぼる。

03_打ち合わせ

雨「なんか温泉とか行きたいよな〜」

ね「ああ、いいねえ。しっぽりと温泉でゆっくり。箱根とか行ってゆっくりしたいな〜」

雨「じゃあ、ねお、行ってきてよ。走って」

ね「走って!?なぜそーなる!?距離知ってんの?箱根駅伝って片道で百キロ越えるんだよ!バカじゃねーの!」

 

雨「じゃ、なんか他に企画あんの?」

ね「うっ…。(特に思いつかない)」

雨「じゃ、決まりね。早速今週末よろしく」

ね「・・・(まじか、この鬼畜)」

02_スタート地点
というわけで今ここ、読売新聞のビルの前に立っている。

東京駅にほど近いここ大手町は夏みたいに太陽が照りつけて、時刻はもうすぐ正午になろうとしている。梅雨はどこにいった?

足下に引かれた線はあの箱根駅伝のスタートライン。

もちろん観客やピストルを鳴らしてくれるスターターなどいない。
周りにいるのはビルのメンテナンス会社の人たちだろうか。昼休憩で日陰に座り込んでコンビニ弁当を食べている人だけだ。そこになぜか短パンの男が一人。

ランニング姿の僕を奇怪な目で見ているのがわかる。そりゃそうだ。

一本通りを越えた皇居外周には皇居ランナー達がわんさかいてぐるぐるとお堀を回っているのだ。

それなのになぜかこんな休日で人気の無いビルの間に立って挙動不振な男がいるのだから。

 

スタートラインには箱根駅伝の各名所が歌川広重の浮世絵を添えてパネルで記されている。04_パネル
ゆっくりとストレッチしながら眺める。思わず一つ一つ読み込んでしまう。

なんたって90年以上の歴史が積み重ねられた大会だ。毎年それぞれの区間で汗と涙にまみれた情熱がほとばしっているはずだ。そんな重みのある大会に僕も勝手に参加しようとしている。いや、参加ではないな。マインドの話だ。

もうすぐスタート予定の正午。傍らに置いていたザックを背負って腹と胸のバンドを締める。

長丁場になるのでトレイルランニング用のザックに荷物を詰めて走るのだ。

ザックの中身はタオル、ゴールした後箱根で温泉に入るので着替え一式、ペットボトルの水をとりあえず一本(無くなったら道中コンビニで調達)、財布、スマホ、目薬、絆創膏、夜から着用するヘッドライト。あとコースをプリントしたざっくりの地図。

地図だがきちんとした大きな地図は多分不要だ。もちろんあるにこした事はないが、箱根駅伝のコースはどこからどこまでが○号線と言うところだけ押さえていればだいたい問題ないはず。
(しかしこのおおざっぱな正確が後に足を引っ張ることに)

念のため箱根駅伝の説明も。

言わずと知れた正月の風物詩でもある箱根駅伝は例年1月2日と3日の二日間に渡り行われる大学駅伝の競技会。
コースは下記の図のようになる。

コース
今僕が立っている東京駅にほど近い大手町・読売新聞東京本社ビル前をスタートし、往路、復路、各五人でタスキをつなぎ、神奈川県の箱根(芦ノ湖)までを往復する。その距離は往路107.5km、復路109.6kmの合計217.1km。今回僕はその往路107.5キロを走るってわけだ。マジか。

いよいよ正午。僕はゆっくりと走り出した。

日比谷通りをまずは品川へ向かって走る。
05_標識
昨夜は睡眠をたくさん取っていたので足取りは快調だ。鬼編集長の命令とはいえ、走り始めるとやはり気持ちのよいものだ。

実際の箱根駅伝はもちろん車道を走っているが、歩道を通行人や自転車に気をつけながら走る。

皇居を抜け、日比谷公園を横目にゆっくりペースで脚を進める。土曜日の昼間なのでデートしているカップルや家族連れ、外国からの観光客が多い。皆なんか楽しそうだ。その横をはあはあ言いながら駆け抜けて行くおっさんが一人。僕だ。

やがて右手に大きなお寺がそびえる。

06_増上寺

かの徳川家の菩提寺である増上寺だ。外国人観光客がたくさんいて危ないのでここは歩いて抜ける。
※人が多いところや横断歩道を渡る時は走らないで歩きます。
07_増上寺_おじぎ
無事を願い一応挨拶しておく。

そしてすぐに現れるのが東京タワー。
20_東京タワー
個人的にはスカイツリーよりも東京タワーの方が好きだ。

脚を止めて見上げてみる。うん。やはり鉄骨具合がいかにも鉄塔という無骨な感じがしていい。赤白の色もいい。スチームパンクノスタルジー。別に東京出身でもないのになんかほっとするのはなぜだろう。

そのまま走り、やがて15号線に合流。
09_第一景品合流
第一景品を走り品川方面へと向かう。今日は暑いので脱水に気をつけながらこまめに水分補給を行う。

そして品川駅に到着。駅前は人が多いので歩いて抜ける。この駅前のパチンコ屋さんって店頭で従業員がめっちゃ踊っているよね。

品川駅を越えるとぐっと通行人は減るがそのぶん歩道が狭くなるので注意が必要。そういう道ですれ違うときは迷わず歩く。

順調に走り続け青物横丁や平和島を順調に抜ける。
道中、大森海岸の駅でドラマのロケをしていた。好奇心に勝てずちょっと見物してみる。う~ん、多分遠くに見えるあの女の子が主人公っぽいけど誰か全く知らないな~。疎いのがいいことなのかどうなのかと考えなくもない。

そのまま蒲田を行進して抜けるとやがて川にぶちあたった。多摩川だ。
10_多摩川
あのたまちゃんが居た多摩川だ。

11_多摩川02
橋の上から。これを越えるとやっと神奈川県に突入。

12_神奈川入
川崎市インダハウス。この時点ですでに14時くらい。

川崎に入るとまた歩道が広がって走りやすくなった。暑さにやられて多少バテがきている。ここらでどっかりと休憩をとることにした。

ちょうどコーヒーのお店があったので迷わず休憩をとる。
13_コーヒー2

12_コーヒー
ああ、カカオが胃に染み渡る。

まだまだ脚は動く感覚だ。調子がいいみたいだ。

そのまま走り続ける。鶴見に出た。
14_鶴見
箱根駅伝ではここが一区から二区へのタスキを渡す箇所になる。

気持ちの上ではタスキをつなげている。一区ねおから二区のねおへ。

ここまでで約21キロ。
鶴見まで
あれっ!?まだそれだけっ!ハーフマラソンの距離しか走ってないのか。正直心理的にはもうかなり走ってきた感覚だったのに。残り80キロもあるという事実に絶望しかける。

ちょっと疲れてスーパーでバナナ買って食べる。本当は1本で良かったのだが房単位でしか売ってなかったので仕方ない。
もちろん全部食べれる訳無く思った通り残ったバナナがかなりの荷物になる。しかしまたこの先必要なときが来るだろうなと思いザックに無理矢理ねじ込んだ。

ここからはひたすら横浜へ向かって走り出す。

横浜にたどり着く手前、なにやらお囃子が聞こえてきた。ふと見るとお祭りの最中ではないか。
15_祭り
おもわず中断して屋台が並ぶ通りに脚を踏み込む。

浴衣姿の若い子が眩しい。神社にお参りをして屋台でゲソ焼きを買って食べる。
16_祭りゲソ
子供の頃からイカ焼きはゲソを買ってしまう。屋台のイカ焼きってなんかランクがあるでしょ。ロケットみたいな姿の奴が一番高くて500円とかでゲソは一番安い。子供の頃ってお金なんてほとんど持ってないからお祭りのとき一番安いゲソしか買えなかった。そのせいか大人になった今でもなんとなくゲソを選んでしまう。

17-服のしみ
ノスタルジーの代償。立ったままゲソにかぶりついていたのでタレが白いシャツに飛びまくり。まだ前半戦だがもう服が汗やらシミやらでぐちゃぐちゃだ。

祭りを堪能したところでゆっくりとまた走り始める。

だんだんと視界に高いビルが増えていく。やっと横浜についた。この時点ですでに夕方に入っていた。
18_横浜駅

19_横浜駅2

時間が許すなら中華街に寄りたいところだがさすがにその余裕も時間もない。

まだまだ先は長いのだ。

主にツイッターにいます→@kenihare 無言フォロー嬉しいです。


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。