一人箱根駅伝 後編

※これは2016年に書いてたけどボツになったやつが発掘されたので掲載したものです。

そろそろ薄暗くなってきた横浜を走り抜け、保土ヶ谷へ。

第二部02_保土ヶ谷
保土ヶ谷の駅前は短いけどなんだかノスタルジックな雰囲気。

こういうのなんか好きだ。酒も飲めないのに。歩道が狭いのでここは歩いて通過。

第二部01_小田原まで
小田原まで52kmってマジかよ。絶望が襲うが慌てて振り払う。いや、いけるだろう。いけるはず。

すでにこのあたりで実は脚がかなりしんどくなっていた。

第二部03_戸塚まで
ダラダラと走ってはコンビニで休憩。また走ってはコンビニで休憩を繰り返す。

やっと戸塚駅に到着。すでにあたりは日が落ちてすっかり暗くなっている。

買っていたバナナはとっくに一房全部食べている。食欲らしき物は消え失せて、バナナと水分以外、まともな物は食べていない。

戸塚を過ぎてさすがに何かエネルギーを補給しとこうと思いコンビニに寄る。しかしホントに食べれる気がしない。悩んだ結果、選んだのはなぜかフィットチーネグミ。

第二部13_グミ
裏の駐車場でねちゃねちゃとするめのようにグミを噛み締めている。暗い駐車場の隅っこでだいぶ危ない奴だ。

しかしグミがやたら美味い。グミなんて食べたのいつ以来だろう。僕の知らない間にグミは随分進化しているみたいだ。フィットチーネってなんだろう?イタリア語?そろそろ思考がまともではなくなってきているのが分かる。

第二部04_アキレス腱をのばす
多分戸塚駅前。ちょっと都会になる。
やがて第二区の区間の終わり地点、戸塚中継所へ来た。やっとこさ。

えっと鶴見からここまでが23.2キロ。スタートから約45キロくらい。すでにフルマラソン以上の距離を走っているのか。しかしこの時点で19時を回っている。走り始めて7時間が経過。当初の予定より大幅に時間がかかっている。

そしてそのまま藤沢を目指すが脚が全然思うように動かない。少し走っては歩き、少し走っては歩きとそんな具合だ。

そんなグダグダな状況の中、痛みは急に来た。
第二部14_脇が痛い
右脇が痛い。脇?えっ?ワキ?。

なんだ?脇が痛くなるなんて初めての事だぞ。止まって腕を動かしたりして原因を探してみる。

どうやら右の脇が擦れてそこが痛みを発しているらしい。
第二部15_脇
靴擦れならぬ脇擦れだ。

太っていた時期に股擦れという現象にはたまになった事があるんだけど、脇擦れって始めてだ。
走るたびに擦れた脇の皮膚に激痛が走る。やばい。これはなんとかしなければこの先、本当に走れない。脇擦れのためリタイアってちょっとダサすぎるだろう。

取り急ぎ持っていた絆創膏を何枚か右脇に貼ってみる。第二部10_バンソーコー
汗ですぐはがれるじゃねーか。

そうか。タオルで脇の汗を拭いてから貼ればいいんだ。

しかしザックから取り出したタオルは未使用だったのにビショビショ。汗をかきすぎて背負っていたザックの中にまで水に浸かったみたいに汗で濡れていた。なんてこった。

コンビニでポケットティッシュを買い、汗を拭って絆創膏を再度貼る。うん。なんとか剥がれないかな・・・。

少し走ってみる。さっきよりは多少マシになったがまだ痛みはある。さらにこの絆創膏もすぐ剥がれそうだ。

試行錯誤の結果、今まで前後に振っていた右腕だけ意識して横に振ってみる。こうすると脇が擦れなくて走れることを発見した。
第二部09_腕の振り方
左腕は前後に、右腕は左右に振りながら走る。多分正面から見るとさぞや滑稽な走り方になっていると思うが背に腹は代えられない。

しかし脚がダメになるより先に脇にトラブルが起こるとはまさかだった。

余談だが長い時間走ると乳首が擦れてマジで痛くなるので乳首には最初から絆創膏を貼っている。
多分ランナーでは常識だと思う。多分。

ダラダラと走っていたが一歩ずつでもゆっくりとでも進んでいれば先は見えてくるもの。
やっと藤沢を越えた時には既に22時を回っていた。

あと少しで海に出るはずだ。地図を見返す。

ん?なんか違和感。

!!道を間違えているではないか!

藤沢から何も考えずまっすぐ下って行けば海に出てコース通りと思っていたけど、そうじゃなかった。本来曲がるべき箇所を見逃していたようだ。

コンビニで落ち着いてざっくりプリントアウトした地図を見返す。やはり間違っている。

しかしこの先道は本来のコースに合流するはずだ。遠回りになってしまったがこのまま走る事に決める。

ん?この先、道が左右にしかない。海だ。やっと海に出たんだ。おおー海きたよー!

海は無条件にテンションが上がる。

しかしあたりは真っ暗で全く人の気配がない。まだ夏でもないし。今0時だし。

道路に車はビュンビュンと走っているが歩行者や自転車の人は見当たらない。

疲れた身体で精神もやられていたのだろう。なんだか急激に寂しくなってきた。
とりあえず砂浜にいってみる。

真っ暗すぎてまともに海が見えねえ。

第二部11_海で黄昏れ

なんで俺一人でこんなこんなことしてるんだろう・・・。

寄せては返す湘南の波を見つめながらなぜかセンチメンタルになっていた。
第二部18_海での言葉1
いや、違う。本当はそんないいこと思ってない。

第二部18_海での言葉2

こっち。温かい風呂に浸かって布団で寝たいな・・・。

第二部12_海で石投げ

そんな時、遠くから自転車のライトが近づいてきた。すでに暗がりにも目が慣れてぼんやり警備員のような服装が見える。

慌てて逃げ出してしまった。別にやましい事も無いのだが、職質とかされるといろいろと説明しなくてはいけなくて多分めんどくさい事になる。

さて、海岸道路沿いの歩道を走り出す。さすがに海沿いは少し肌寒い。

とことどころ街灯がなく真っ暗なので用意していたヘッドライトを装着して走る。用意していて良かった。

しかしもう脚がほとんど動かなくなっている。
第二部16_海岸線を走る
歩いて止まって、歩いて百メートルくらい走ってまた止まって・・・。歩くのさえすでにきつい・・・。


第二部06_サザンビーチ

あっ!サザンビーチ!これが噂の!(噂ではない)テンションが少しだけ上がる。

しかし脚が全然動かない。飲み物がとっくに尽きてるのにこの道、全然自動販売機が無いじゃないか。

その後よたよたと歩き続け、橋を渡る。
第二部17_橋を走る
冷たくて強い横風が限界に近い身体にさらに鞭を打ち付ける。

かろうじて橋を渡り終え、ふらふらとあるいいているとデニーズが目に入った。

この時僕が考えていた事はもう走れない、歩く事さえまともにままならないこの今の状態。
仮にこのまま歩き続けて進んでも小田原までもたどり着けないかもしれない。

残りも40km以上残っている。でも諦めるのは嫌だ。ここまで60キロも走ってきたんだ。

葛藤をしばらく繰り返す。

うん。無理だ。

リタイアを決意する。時刻は深夜2時。もう脚が動かない。もう歩ける気もしない。

デニーズにて始発電車が動くまでぐったりと座り込んでいた。頼んだハンバーグの味もよく分からない。

今の実力では60kmが限界か…。 自分の力量を思い知らされた。

デニーズでいちゃいちゃしているカップルに風邪ひけ!と願いながら、朝を待って一人箱根駅伝は終了したのだ。

03_打ち合わせ

雨「・・・したのだ。じゃなくて!結局ゴールできてないのね」

ね「うっ、ま、まあそうだけどそれでも60キロ走ってんのよ。もっと褒めてよ。褒められて伸びるタイプなんだから」

雨「でも小田原すらたどり着いていないよね。温泉ももちろん入ってないよね」

ね「・・・」

雨「じゃ、またそのうちチャレンジだな」

ね「・・・まじか、鬼畜」

主にツイッターにいます→@kenihare 無言フォロー嬉しいです。


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