下戸酒場 【第1回】ちゃんぽんと焼き鳥

僕はお酒が飲めない。しかし、居酒屋や小料理屋などで一人で飲んでいる粋な姿に憧れはある。別にお酒を飲めなくても居酒屋やバーに行ってもいいんじゃない?そんな思いはずっと胸のうちにあり、実際にお酒を頼まずに行ってみた。
第一回目は家の近所にある焼き鳥屋さん。ここはごちゃごちゃした街の喧騒とはまるで関係なしの落ち着いた外観のお店だ。どこか昔ながらの昭和の香りも漂う。駅からの帰り道にあって前から気になっていたのだ。
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この店に目を付けた理由はいかにも落ち着いた焼き鳥屋さん、という外観にそぐわず、なぜか看板に大きく「ちゃんぽん」と書いてあったからだ。
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だったらちゃんぽん大好きな人間がちゃんぽんだけを目当てでお店に入っても決して不自然ではないだろう、という目論見があった。
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うう、緊張する。
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果たしてお酒の飲めない人間が焼き鳥屋の暖簾を一人でくぐってよいのだろうか。
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平日だからだろうか。店内は思いのほかがらんとしていた。高齢の二人の方がテーブルでTVを見ながら静かにお酒を飲んでいるだけだ。
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おかみさんという呼び方であっているのか?一人なのでカウンターに案内される。
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席に座ると熱々の分厚いおしぼりが出てきた。ビニルをピリッと破く安いおしぼりになれてしまっている僕としてはこれだけでちょっと構えてしまう。おしぼりひとつにこんないいのが出てくるなんてもしかして高級店なのか・・・?不安がちょと頭をよぎる。
とりあえず飲み物の注文を聞かれたので
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躊躇なく答える。
なんだ、酒飲まねーのかよ、と嫌な顔のひとつでもされるかな、と思ったが特にそんな事もなかった。
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さて、手のひらの角質がなくなるくらい必要以上に手をふきふきしたらいよいよ目の前のメニューを手に取ってみよう。
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ヤバイ…、値段が書いていない。
様々な焼き鳥、もちろんちゃんぽんから一品料理まで様々なメニューが並んでいるがその下にあるはずの金額が書いていない。
こ、これはもしかして時価的な・・・?
突如、猛烈な不安に襲われる。一見親しみやすい店構えとは裏腹に実はこだわり抜いた高級食材のお店だったのか…?
いや、どうなのだろう。僕が知らなかっただけで一般的にこういうものなのか…。これが居酒屋ならではの酒の飲めない男に対する洗礼ということか。
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まさか一本いくらですか?なんて聞いてしまう行為はできない。そのくらいの紳士の嗜みは持っているつもりだ。
しかし、こういった事も一応は想定していたため、財布の中身はそれなりに入れてきていた。世の中には僕の知らない世界もあるのだろう。ましてや全くなじみのない居酒屋の世界だ。
もしかしてお店を出るときにはお尻の毛まで抜かれてすっぽんぽんになっているかもしれない。
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もうこうなりゃどうにでもなれという心境でドキドキしながらネギ間やモモ、皮など、ベーシックな焼き鳥を何本か注文した。
いざ注文したら腹が据わるものだ。落ち着いて店内を見渡す。厨房は見えるのは見えるが基本的に隠れていて、目の前で焼き鳥を焼くというスタイルではないみたいだ。
TVではニュースをやっている。注文をとりにきたおかみさんもニュースを見て、テーブルの人とニュースについて話したりしている。きっとテーブルの人たちは常連なのだろう。
店の雰囲気のおかげだろうか。アウェイ感はそこまで感じない。
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そこでお皿に盛られた焼き鳥がやってきた。
炭火で焼いた香ばしい肉の匂いが一瞬にして食欲をかきたてる。
がっつきたい衝動をこらえゆっくり一本を手に取り口に運ぶ。やはりうまい。
普段、焼き鳥なんてスーパーのお惣菜コーナーで半額になったものしか買わない僕にとっては、こんなちゃんとした焼き鳥は感動すら覚える。
ウーロン茶をチビチビやりながら僕もTVのニュースを眺める。いかにも、慣れたもんですよー、いつも一人で居酒屋で飲んでるんですよー、という雰囲気を醸し出しゆっくりと食べる。
これ、家で一人で食べたら20秒で食べ終わるだろう。
さすがに焼き鳥数本だと食べ足りないし、間ももたないのでここでお目当てだったちゃんぽんを注文する。
「うちのちゃんぽんは本場の味だからおいしいよー」とのこと。出身が長崎なのかな。
そしてしばらくして出てきたちゃんぽん。
居酒屋で出てくる麺類なんてきっと少ない量だろうと勝手に思い込んでいた。しかし、いざ出てきたのはリンガーハットなどのチェーン店と同じくらいのボリュームのものだった。
イカなどの海鮮たちにもすこし焼きめがついていたりするところがいかにも手作りという感じがしてなんか嬉しい。
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麺を豪快にすする。うん。チェーン店のちゃんぽんのようなはっきりとした味ではないが、どこか土曜日の昼におかんが作った感のある優しいちゃんぽんだ。このあたりは好みだが、ちゃんぽんもおいしくて大満足だ。
ちゃんぽんを食べ終えた時点で僕はウーロン茶しか頼んでなくて、まだ半分くらい残っている。
居酒屋の収益はやはりお酒だと勝手に思っているのでお店からすると飲まない僕のようなお客は利益が薄いだろうという引け目もちょっとある。
もうお腹はいっぱいだが、気を遣ってもう一品頼むことにした。
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選んだのはなぜかじゃがいもの短冊炒め。特に食べたかったわけではない。おそらく値段もそんなに高くないだろうという算段と、適当に目についたからだ。量も小鉢のおつまみ程度だろうと予測していたが…
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なんとどーんとてんこもりで出てきたのだ。短冊炒めが。ほかほかの。本当にジャガイモだけの。
育ち盛りの子供が三人くらいいる家庭のような大皿に盛られて。
腹一杯のここにきてまさかこのボリュームで出てくるとは。
しかし出されたものを残すのは悪いのでなんとか頑張って腹に押し込んだ。
いよいよドキドキの会計だ。いったいいくらなのだろう。
会計はひどくまっとうな金額だった。あれっ?あれだけ頼んだのに思ったより全然高くない。
なんだ良心的なお店じゃないか。メニューに値段を書いといてくれたらもっと安心して頼めたのに。
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とりあえず、このお店は一人でお酒を飲まずともなんとかなる事が分かった。値段は分からないけど。
またちゃんぽんだけ食べにこよう。

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