自販機を詰まらせた話

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幼い頃の事だ。確かまだ小学生で低学年の時だったと思う。

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ある日の日曜日。父親にジュースのお使いを頼まれた。
家族全員の分で五本とかだったと思う。
自販機までのわずかな距離が幼かった僕には大冒険みたいなものだ。道の脇にあるドブを覗いたり、わざと林の中を通ったりと寄り道をしながら自販機へ向かった。


普段絶対持つ事のないお金を預かった事とお使いをまかされた責任感で随分気分も高揚していたのを覚えている。
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自分で自販機のボタンを押して買う、という行為そのものが楽しい。
しかも家族分、たくさん買うということにどこか大人びた感覚になっていた。
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ボタンを押す。
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自販機の口へジュースが落ちる。
しかし、まだとらない。
貯めてから一気にとろうと思ったのだ。
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お金を気にせずまとめて買う事をいわゆる大人買いという。これは的を得た言葉だと思う。お金に余裕がある大人だけに許された贅沢な行為であろう。
まとめて買うという行為、大人にしかできない事を今、子供の自分がしている、という事に興奮を覚えている。似非大人買いを味わいたかったのだ。
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ボタンを押す。
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ジュースが落ちる。
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ボタンを押す。
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ジュースが落ちる。
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繰り返すJUICE・HIGH。


さて、いざ貯まったジュースを一気に取り出して大人買いの欲求を満たそうと思ったその時、


ジュースが貯まりすぎて取り出し口にひっかかって取れなくなっていた。
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焦った。しかし焦っても、ジュースは取れない。
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なんという事だろう。大変な事をしでかしてしまった。
このとき僕が思ってたのはジュースを持って帰れない、取り出せない、ということより、なぜか
「自販機を壊してしまった。弁償させられる→僕じゃ弁償できないから親が変わりに弁償させられる→親に迷惑をかける=当然めちゃめちゃに怒られる」という図式からくる恐怖だった。
どうしようもなくてその場でおろおろとしていた時、そこへ女子高生がやってきた。
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よりによってその女子高生たちはジュースを買おうとしているのだ。
もちろん取り出し口にはジュースが詰まったまま。
女子高生はそれに気づいていない。
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僕は「今自販機が詰まってる」という事を教える事ができなかった。言葉が言えなかった。
もうテンパりまくって、恐怖を感じすぎて後ろからハラハラとこれから起こるであろうさらなる悲劇を震えながら待つ事しかできなかった。
かくして女子高生はジュースを買った。買ってしまった。
もちろん事態はさらに悪化。女子高生が買ったジュースはすでにカオスな状態の取り出し口までをも届かず途中で止まった。カオス追加。おっかけジュース。
詰まっているのに気づいた女子高生は挙動不審の僕に気づいてすべてを察したのだろう。
「この詰まってるジュースは君の?君がやったん?」
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答えられない。怒られると思って怖かったのだ。
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僕は逃げた。
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そのまま走って家まで行き、父親に詰まらせた事を話した。
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泣きながらでうまく説明できなかったが、なんとか伝わったのだろう。
父親はとりあえず自販機まで行ってみようと僕を連れて自販機へ。
女子高生はまだ自販機の前にいて、なんとか自分が買ったジュースを取り出そうと奮闘していた。
父親と僕に気づいた女子高生は詰まらせた男の子の親が来た、という事でちょっと安心したみたい。取り出し口の前を開けて父親に譲った。
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取り出し口の中はジュースの缶がやっぱりカオスでもうぐちゃぐちゃとなっている。
ちょっとだけ考えてから父親はまず、すべての缶を縦にした。
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なんと縦にしたら取り出し口に引っかかる事なくするりと取り出せたのだ。
このパズルを解くような取り出し方が今の僕にすぐ思いつくかといわれればちょっと自信がない。
もうダメだと思っていた所からの起死回生。
この時は父親を本当に心の底から尊敬したものだ。
無事に全部取り出せて、僕も女子高生もジュースを持ち帰る事ができた。
帰り道えぐえぐとむせび泣きながら手をつないで帰った。
全く怒られなかった。むしろ父親は笑っていた。
大人の賢さや凄さを痛感した。
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なぜ、こんな昔の話をしたかというと、最近駅のトイレが詰まっていたのを知らずにおしっこをしてしまった。当然、流したら洪水のように水があふれ出てきた体験をしたから。
その時、こんな昔の切なかった事を思い出したのだ。
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トイレからはもちろん逃げた。

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