子持ちししゃも

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わかめご飯が好きだ。給食に稀に出てきたにくいやつ。その存在感がどんなおかずより際立っていた。多分僕にだけ。

炊き込みご飯も大好きだ。これがあればおかずなんていらないだろう。

おかずに勝てるご飯。それはちょっと凄い事ではないのだろうか。炊き込み御飯なんかはもはやご飯と呼ぶより完全食と呼んだ方がいい。お米に野菜に鶏肉までが一体になっている。完璧だ。完全食だ。他に何もいらない。献立ヒエラルキーのなかでも最上位にいるのではないか。

たまに無性に食べたくなり、コンビニでおにぎりを買ってしまう事がある。それはもう無意識と呼べる。おにぎりを買う。選択肢はワカメご飯か炊き込み御飯の二択だ。あ、意識がある時は昆布を選ぶ。

 

なんでこんな話をしているのか。ああ、そうだ。今しがた聞いていたラジオから給食という言葉が耳に入ったからだ。

そういえば小学生の頃、給食についての忘れられない思い出がある。

大人になった今では好き嫌い無く何でも食べられるようになったが、小学校の時はししゃもが食べれなかった。子持ちししゃも。なぜか小さいつぶつぶの感触が無理だった。飲み込めなかった。

しかしなぜか給食にはやたらししゃもが出てきた。月に二回くらいは出てきたのではないか。今思うと栄養価が高いので栄養士さんが上手い事献立を立ててくれていた事は分かるのだが、ししゃもの日は学校を休みたくなるくらい嫌だった。世の中を呪うよりししゃもを呪っていたぐらい健全な子供だった。

給食では当然食べきれない。今はどうか知らないが当時は給食を残す事なんて許されず、基本的に全部食べるまで給食は終わらなかった。

あれは三年生くらいのころだっただろうか。

その日の担任は厳しかった。何度かはししゃもが食べれないのも許してくれ、残すことや友達にあげるのが黙認されていたがついに全部食べなさいと言われた。

僕は食べれず、少し口をつけてはおえっとえづいて給食を片付けれないままししゃもとにらみ合っていた。

給食時間が終わって昼休み。皆がドッジボールではしゃいでいる時にもししゃもとにらみ合っていた。とっくにべそをかいて泣いているが先生は許してはくれない。今日は絶対甘やかさないという教育方針を決めていたのだろう。

ついに昼休みも終わり掃除の時間となった。ししゃもはまだある。

その時、掃除をしていたある女の子が僕の机にぶつかった。机の上から食器ごとししゃもが床に落ちる。アルミの食器が乾いた音を鳴らす。

それはだれが見てもわざとだった。

先生はため息をつきながら片付けなさいと言い、僕は解放された。勇敢なジャンヌダルクに救われたのだ。

小学生にしてなんて機転のきく助け方なのだろう。粋である。僕はその子に惚れた。抱かれてもいいと思った。抱かれる意味も分からないのに。

ししゃもを普通に食べれる大人になった今、給食と聞くと思い出す。もう随分昔の事。

わかめご飯が大好きだった事、ご飯と牛乳の組み合わせはやはり無理を感じていた事、子持ちししゃもとその子の事。

その子は中学の後半からヤンキーになってしまった。いまでも粋で勇敢であってほしいと思う。

 

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