鬼の話

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鬼と言えば桃太郎。桃太郎の話は説明する必要もないだろう。

僕は岡山出身なので桃太郎に関しては普通の人より特別に思い入れがあるように思う。

駅前には桃太郎の銅像があるし、岡山出身といえば「あーきびだんご!」と高い確率で言われるのは岡山県人は皆経験があるだろう。

当時、桃太郎電鉄なんてゲームソフトが流行っていたりちょっとしたブームだったような記憶がある。

桃太郎のお話といえば典型的な勧善懲悪の話。

悪い鬼を正義の桃太郎が退治してめでたしめでたし。

 

・・・本当にそうなのか?

 

きっかけは一冊の小説

周りにことさら言っていないので意外かもしれないがかなりのオカルト好きなのだ。多分あなたが思っている以上に。思えば幼少期に見た鬼太郎に強い影響を受けているんだろうと今では思う。水木先生は神。

幽霊、妖怪、そのあたりはもうなんでもござれ。小説から文献までちょっとでもかすっていたらひたすら読みあさっていた時期がある。また妖怪となると民俗学と切っても切れない関係ともなる。もちろんそっち方面も読みあさっていた。まあ、20代後半はとっぷり嵌っていた。

そんな時一冊の本に出会った。

https://www.amazon.co.jp/QED-河童伝説-講談社文庫-高田-崇史/dp/4062765845/ref=la_B003UWNG6U_1_24?s=books&ie=UTF8&qid=1511660349&sr=1-24

高田崇史さんの河童伝説。

タイトルに河童と入っていたので何気なくとった本だったがこれが分岐点だった。

中身について語るのは野暮なので肝要なことのみ言うが、

「河童はいわゆるイメージする妖怪ではなく、かつて河童と呼ばれた人々がいた」という事である。

あくまで小説の中の説ではあるがその根拠となるロジックはきちんと説明されてる。その説を元にしたミステリーサスペンスです。

目から鱗とはこの事だろうか。詳しくは買って読んでください。

妖怪と思っていたものが実は人間だった。これは衝撃ではなかろうか。

すぐにこの高田崇史さんのQ.E.Dシリーズを読みあさった。その中に桃太郎に焦点を当てられた話があったのだ。

https://www.amazon.co.jp/QED-鬼の城伝説-講談社文庫-高田-崇史/dp/4062760029/ref=pd_cp_14_4?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=JHCA46SM8ASH0DW4C1N3

子供の頃から刷り込まれていた悪い鬼、正義の桃太郎。

河童同様、鬼も人間。

では、桃太郎の話を目線を変えてざっくりと。

※高田崇史さんの本やその他の文献などを読んだ上での僕の解釈です。

元々岡山に住んでいた人たち。全国を統一したい強大な大和朝廷。

朝廷「岡山の土地ちょうだい」

岡山の人「嫌です」

朝廷「あっ逆らう感じ?朝廷に従わない人なんてもう同じ人間としてみなさなくするよ?いいの?鬼って事にしちゃうよ」

岡山の人「ざけんな」

朝廷「吉備津彦命(桃太郎)くん、ちょっと岡山に出張行って治めてきて。あっ、一緒に部下の犬・猿・雉(と呼ばれた人)を連れて行っていいから。」

そうして強大な大和朝廷にかなうわけも無く鬼(岡山側)は破れる。

歴史は勝者によって作られると言われる。

桃太郎の話なんかは完全に朝廷側の目線で書かれているから勧善懲悪の話として書かれている。しかし、岡山の人側からするとこんなのふざけんなという話で。ホントの悪は侵略してきた桃太郎、朝廷だろう。

いままで信じていた、思い込んでいたものが実は全く逆だった。

大げさではなく価値観がひっくり返るとはこの事。ガツンと衝撃を受けた。

と、まあ、この手の話の釘付けになった僕はそこから色んな似たような話などを調べて読みあさっていくのです。

同じような話は全国各地に実はいっぱいあって。多くの場合は朝廷にとって都合良く語られ現在でもそうなっている。これは現代に置けるマスコミの印象操作に似ているな。

そういう事を知ってしまうと次の段階は実際に現地を見てみたくなるもんで。

岡山の鬼の城跡(鬼ノ城・鬼のボスは温羅)や吉備津神社などに足を運ぶのはもちろん、京都にはそういうネタが多いのでよく通ったものだ。いわゆるフィールドワークにまで手を出していたのだ。

とりわけ僕は「鬼」というものに惹かれた。頭に角があって虎のパンツを・・・。まあ諸説ある。でも鬼は人なんだ。

そんな中、酒呑童子の話を知る。あの酔わされて首を落とされる話。(これもよく考えたら卑怯の極み)

その酒呑童子が比叡山を追われ、一時期京都の八瀬という所に身を潜めていた。八瀬の山中の洞穴に隠れていたらしい。大江山に行く前の話。

その洞穴いってみてえ!となるのが嵌っている証拠。

前置きが長くなってしまった(でも語り足りない)

実際に八瀬に行ってみた話である。

鬼の子孫

夏の暑い日だった。叡山電車「八瀬比叡山口駅」で電車を降りる。

朝に大阪を出てすでに昼前。そば屋さんが一軒あるだけの駅前だ。

当時は今みたいにスマホでもなかったし、酒呑童子の洞穴についての場所など分からないまま半ば勢いで来てしまった。

八瀬に住む人々は八瀬童子といい鬼の子孫と言われている。これは酒呑童子とは別の話で比叡山の最澄に仕えていた鬼であったという話からきている。

現地に行けば観光案内なんかがあるかなと思っていたが、見事にない。

駅前に立っていた看板マップには洞穴については書いていなかった。まずいな。情報がない。

そば屋さんに入ってそばを注文して聞いてみる。

「えっ、酒呑童子の洞穴・・・?なにそれ?」

いよいよまずい。地元のそば屋さんでも知らないなんてかなりやばい。

とりあえず町(村と言った方がいいかもしれない)を歩いてみる。

あっ、畑に人がいる。声をかけてみる。

「あー、洞穴なあ。小学校の時に行ったなあ。今でもいけるんだろうか・・・」

あった。良かった。しかし詳しい場所は分からないそう。どうやらこのあたりでは小学校の行事で行くみたいな事を言っていた。そうなのか。それぐらい有名なら行きやすいのかも。

別の人にも聞いてみる。

「ああ、こないだ小学校の先生が下見で行ったらしいって行ってたよ。あそこのフェンスのとこから行けるはず」

やっと有力情報をゲット!入り口さえ分かれば後はなんとでもあるだろう。

教えてもらった入り口に向かうと、道路のフェンスの一部が開くようになっている。しかしそれは観光地への入り口とはほど遠い雰囲気で山林の仕事とかの人しか使わないような代物だった。

で、でも確かにここのはず・・・。

山の中に足を踏み入れる。人なんて入らないのだろう。落ち葉で覆われていて道なんてものはない。ただ地形的にここが道・・・かな?という勘をつけて登るしか無い。

とはいえ、所々の木にテープが巻いてある。これは道が正しい事の証拠だろう。

すでに登る事一時間。全く洞穴らしきものに着く気配がない。段々道も勾配が険しくなっていた。すでに汗だくで軽く転けたりしたのでべとべとのドロドロである。正直こんな事になるとは思っていなかった。

そういえば話を聞いた農家の人が「水は持っているのか?」と聞いてきたのはこういう事か。一応水は持っていたが嘗めてた。しかしここまで来たら行くしか無い。

ふと横を見ると遠くに洞穴らしきものがあるような・・・。

しかしそれは崖の中程にあってどうやっても行けそうにない。というか行こうしたら多分死ぬ。小学校の行事でそんなとこに行く訳がない。あれは違う。

踏ん張って登りだす。

この頃、今より太っていたし、まだ登山も始めていない。そしてこんなにしんどい事をする予測もしていなかった。つまりはバテバテだったのだ。

心が、心が折れそう。なんでこんな事をしているのだろう。よく分からなくなった。そういえばしばらく木に貼ってあるテープも見てない気がする。この道で合っているのか?こういう事を思い出したら危ない証拠。

ここでトドメを刺す出来事が起こる。

目の先にスズメバチの群れ。あっ、これあかん奴や。冷や汗が頬を伝う。

できるだけ足音を立てないようそうっと静かに僕は来た道を引き返した。

下りは早かった。幸い遭難する事も無く入り口まで無事に戻る事ができた。

服も靴も汗と泥でドロドロの姿だ。まさか山を登るなんて思っていなかったから着替えなんて持って来ていない。

とにかくどこかで休もう。近くに神社があったはずなのでそこで休憩を取る事に。

蝉時雨の中、石段に座り一息をつく。誰もいない。木漏れ日が心地よくやっと落ち着いてきた。

あ〜あ、結局洞穴に行けなかったなあ。

そんな時、軽トラが神社にやってきた。車から降りてきた麦わら帽子のおじいさんに挨拶をする。

おじいさんも石段に腰を下ろす。農作業の休憩で一服しにきたという。

僕が大阪から洞穴を探しにきた事に好意を持ってくれたようで、おじいさんは色々な話をしてくれた。この八瀬の村の話。神社の話。詳しく書くと長くなるのでやめとくが興味深い話をたくさん教えてくれた。

そして今このシチュエーションがなんだか映画の一コマのようで。

木漏れ日のさす神社で知らないおじいさんとタバコを吹かしながら昔話をしている。なんだか不思議な時間だった。

洞穴にはたどり着けなかったけど貴重な時間を過ごせて満足だった。

ちなみに調べても洞穴の正確な場所が今でも分からない。もしかしたら途中で見た崖の洞穴がそうだったのかな、という感じはありますが。