バレンタインの記憶

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スーパーに買い物に行ってそのプッシュぶりに驚く事がある。

クリスマスまではケーキ推し。12月の25日の夜遅くになると陳列コーナーが正月向けのおせちにガラッと変わる。そして正月が過ぎたら一旦通常運転だが、すぐに今度は節分だ。

そしてその次はチョコ。バレンタイン。

あんなのはお菓子会社の戦略だ!なんて冷めた事を言うつもりもない。いいじゃないですか。日本各地で恋や愛が大量生産される日があっても。素敵。

そんなバレンタイン。小学生だった頃のとある一日を思い出す。

モテ期?

人生にはモテ期というものが本当にあるのかもしれない。

小学生の時のモテる基準というのはちょっと体育ができるとか、ちょっとだけ面白いとかめっぽうハードルが低い。

小学校のある年のバレンタインに複数のチョコをもらった経験がある。過去の栄光を懐かしむような気持ちで、なんだかなあ、という気持ちにはなるが、確かに当時ちょっとだけ目立つような子供だったかもしれない。スポーツ刈りなのに前髪の長さを気にするませたくそガキって感じだ。今、当時の自分に言葉をかけるなら「お前、勘違いすんなよw」って草付きで教えてやる感じだが、まあちょっとイキッてる子供だったと思う。それが女子には魅力的に見えたのかは知らないが何個かチョコをもらったのだ。

こうなると盛大に勘違いしますよね。ただの一時の女子の勘違いみたいなものなのに。今くれよ。モテ期。

これはその翌年のバレンタインの話である。

バレンタインが休日

その年の2月14日は日曜だったのである。

これは重大な問題だ。

女子は義理チョコというものをあげる必要がなくなり、その反面男子のがっかりが爆増する。

昨年幾つかチョコをもらっていた僕は今年もまあ、同じくらいもらえるだろうと皮算用をしていた。なぜかわざわざ家まで女子が持ってきてくれるだろうと思い込んでいたのだ。

僕の家は奥まった位置にあった。

二階の兄貴の部屋からは家までの通路が見わたせ、訪れる人が窓から確認できる。

その日、僕はモテに上乗せをするためにいくつかの演出を試みたのだ。

まず休みの日に家にいるのに勝負服を来た。

当時の自分の中で一番いけてるトレーナーを着込んだ。(当時スウェットという言葉はない)胸にBEBEって書いてあったような気がする。ズボンもカーキの外行き用のズボン。靴下も学校用の白ではなく色付きのソックス。

そして重要なのがBGMだ。むろん訪れた女子に「わあ、普段家でもこんなかっこいい音楽を聞いているのね♥︎」と思わせるためだ。どういう心理なのだろう。

兄の部屋にはCDコンポがあった。

かけたCDはACCESS。

https://www.amazon.co.jp/access-BEST-double-decades-half/dp/B0733SPBXH/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1516510130&sr=8-7&keywords=access

ご存知だろうか。復活して最近でもガンガン活動をしている。

当時の僕のボキャブラリーの中では最上級のかっこよさがACCESSだった。「MOONSHINE DANCE」というシングルを持っていたのでそれをBGMにした。

むろんチョコを持ってきてくれた女子に「わあ、普段家でもMOONSHINE DANCEしてるなんて素敵♥︎」と思わせるためだ。

演出といっても小学生の僕に出来る事はこれだけだった。

思い描いたベストなストーリーはこうだ。

①僕にチョコを渡そうと家の近くまで女子が訪れる。

②家に到着する前にほんのりと聞こえてくる「MOONSHINE DANCE」

「わあ、MOONSHINE DANCEが聞こえてくるなんて素敵♥︎」

③チャイムを鳴らし、まずはオカンの「あらあら」という洗礼を受ける。申し訳ないがこれは乗り越えてもらわないといけない。

④オカンが僕を呼んでいる間、女子は玄関で待機。この時、二階から聞こえてくる「MOONSHINE DANCE」に「やっぱり素敵♥︎」

⑤呼ばれてめんどくさそうに出てくる僕。トレーナーはBEBE。照れ隠しのせいかぶっきらぼうに「お、おう。・・・ありがと」と受け取る。頬を赤らめそそくさと逃げるように帰る女子。

⑥おかんがニヤニヤしながらつまらない事を言ってくる。

ここまでがセットだ。完璧。

実行

準備は整った。時刻はすでに午後。昼ご飯の焼そばを食べ終え兄貴の部屋に向かう。オカンは遊びに行かない僕を少し不審がっている。

「MOONSHINE DANCE」をかける。爆音で。外にも届くように窓も開ける。

「うるさいっ!!」

下からオカンの怒鳴り声。ボリュームを下げる。いきなり②の「わあ、MOONSHINE DANCEが聞こえてくるなんて素敵♥︎」という演出は頓挫。仕方がない。

しかし④玄関で待機中の「MOONSHINE DANCE」は欠かせないのでそのボリュームは死守。ギリギリを攻める。

僕は通路の動きが見渡せるよう窓の横に椅子を用意しマンガを読んでいる。もちろん常に通路を気にかけてはいる。見張り台に立っているようなものだ。

午後3時。

訪れる女子はいない。まあ、これからだろう。

午後4時。

通路に動き有り。来たっ!と思ったが郵便屋さんだった。

午後5時。既にあたりは暗くなっている。それでも「MOONSHINE DANCE」はリピートされているし、僕は窓の横に座っている。諦めたらそこで試合終了・・・。

午後6時。

オカンからの「晩ご飯よ〜!」

リングに投げ込まれるタオル。

審判がまだ相手に向かおうとする僕を身体を張って止めにかかる。

終わったのだ。バレンタインが。あのモテ期は何だったのだろう。

 

身の程を知るいい機会だったのかもしれない。それ以来、バレンタインなるものは意識しないようになった。

街やスーパーなどでバレンタインのポップをみると当時の香ばしい記憶が蘇って頭を抱えたくなるのだ。

 

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