[アフリカ]キリマンジャロ登山②

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目覚めは快適だった。ふむ、移動の疲れもなく体調も良い。

朝食はバイキングだ。うれしい。

チャパティ(ロティ?)を発見してテンションがあがる。好物なのだ。

アフリカの食べ物として、右の豆料理のイメージはあった。

何もなければもっとがっついてモリモリで食べるのだが、今日から登るのでかなり控えめにしておいた。スイカが遅れて来た夏を感じさせてくれてうれしかった。

朝食を済ませ、約束の時間にロビーで待つ。

ホテルに一人の青年が入ってきた。僕を見つけてニコッと笑う。

「おはようございます。私はジェームスといいます」

握手と挨拶を交わし車の中へ促される。運転席にはドライバー、後部座席にはジェームスの他に二人鎮座していた。軽く挨拶だけしたが誰がだれやら分からないままだ。

まずは倉庫のようなところへ連れて行かれた。

なんの建物か全く分からなかった。

「ギア」という言葉が聞き取れたので、ああ、ここで登山道具をレンタルするのだなと理解。

そうなのだ。実は手ぶらで登山ができると言われるほど、キリマンジャロ登山に必要なものがすべてレンタルできるのだ。

そのため、僕が登山に関して日本から持参したものは、ヘッドライト、靴下、帽子だけかな。あとはすべて借りる前提だ。

中に入ってみると所狭しと乱雑に登山グッズが並んでいた。

容量いくらなんだろう・・・という馬鹿みたいにでかいザックに防寒着、フリース、タイツ、ニット帽、フェイスマスク、ストックなど一つ一つ雑に選んではぽいぽいザックに詰めてくれる。

靴だけは慎重に選ぶ。なぜなら靴擦れが怖いのだ。たかが靴擦れと甘くみてはいけない。何度も日本の山で辛い思いをしているのだ。今回、あらかじめ防止策として大きいサイズの絆創膏を足首の裏に貼っておいた。

かくしてあっという間に僕の荷造りは終わった。この間、10分もかかっていない。

次に訪れたのは食料品のお店。

どうやら登山中に補給食として食べるチョコなどのお菓子を買っておけという事らしい。

中に入ると驚くほど品数が少なかったが、結構な量のお菓子を買ってしまった。おそらく食べきれないだろうが、ないよりあるに越したことはない。

キリマンジャロはペットボトルの持ち込みが禁止されているので、水筒のボトルも購入しておく。

さて、いよいよスタート地点を目指す。

車内では後部座席が盛り上がっていた。現地の言葉なのでなにを話しているか分からない。僕が黙っていると、心配してくれるのかジェームスが

「ミノール、アーユーオーケー?」

と気遣ってくれる。「ミノル」より、「ミノール」と発音するほうが呼びやすいのだな。

走ること数十分。どうやらスタート地点に着いたようだ。

マチャメルートのゲート。

キリマンジャロを登るにはいくつかのルートが選べる。 

そのなかでも代表的にほとんどの人が選ぶのが二つ。一つがマラングルートで、もう一つがマチャメルート。

おそらくマラングルートを選ぶ人の方が多く、特徴として途中までは山小屋泊となり最短で頂上を目指すルートだ。しかしその分、高山病になるリスクは増すはずだ。

マチャメルートはすべてテント泊。日数も一般的にはマラングルートより多くなるので高度順応ができ、登頂しやすくなる。

登頂率は30%とも50%とも低めの数字を見かけるが、実際のところはよくわからない。その低さの原因は高山病と登頂アタックのつらさにあると思う。

それにすべてレンタルできることがあるように、費用以外で登山に対するハードルは低い。それゆえに普段、登山経験のない方もチャレンジしやすいのも登頂率の低さの原因なのかなとも思う。後で書くが登頂アタックはそれなりにしんどかった。

ルートの話に戻るが僕は迷わずマチャメルートを選んでいた。

単純にテント泊が好きだからだ。山小屋が雑魚寝か相部屋かは知らないが、テントで一人の方が気楽で好きなのだ。

登山客の待機所。

おそらく入山の申請などの手続きをしてくれているのだろう。その間、ここで待つように言われていた。

基本的に団体さんしかいないな。

一人でなんだか肩身がせまい。日本人もいない。

こちらで入山料を支払う。使えるのはVISAのクレジットカードのみ。

昼時でもあったので待っている間ランチボックスを渡された。

ボリューム満点。アルミホイルに包まれているのはチキンだ。

あっ、うまい。ジューシーさがない分、ワイルドな味のハンバーガーだ。

ここには兄弟であろう綺麗な猫が住み着いている。食べているとよこせ、よこせと寄ってくる。あげないけどね。

さて、やっと手続きの準備ができたようだ。本格的にいよいよ出発だ。

 

キリマンジャロ入山

山道に続くゲートをいよいよ超える。

時刻はすでに13時を回っている。

この時点でやっと気付いた。このツアー会社の今日の客、僕一人だ。

てっきり、どこかの団体に混ざるのかと思っていたのだが、客としては僕一人らしい。そうか。

ガイドのジェームス。25歳。かなり男前だよ。

ジェームスに聞いてみる。

「僕一人のためにパーティーは何人いるの?」

「僕がガイドで、コックが一人、で、ウェイターが一人、ポーターが三人いる」

なんと僕一人のために6人が付いてくれているらしい。

ガイド、ポーターが付くこともちろん分かっていたが、せいぜい4人くらいかと思っていたので驚きだった。

僕が「登山客」と書いているのは本当にそういう意味で、あくまで外からやってくる僕たちは「お客」だ。先ほどレンタルしたものはすべてポーターが持って行ってくれる。僕が背負っている荷物は本当に僕が日本から持って来た軽いものだけだ。

「これは大名登山だな・・・」

こんなに楽に登っちゃっていいのかな。対価を払っているとはいえ、自分が使う分の荷物くらいは自分で持つべきじゃないか、なんて気持ちが起こる。しかしそうするとポーターの仕事を奪うことにもなる。その国に、人にお金を落とすのも必要なことだと思うし・・・。

この国にとって登山ツアーは重要な観光資源であるので仕方のない側面はあるが、なんだかモヤモヤしていた。それが罪悪感なのかどうかはよくわからない。

僕らがゆっくりと歩く間にどんどんポーターが抜いていく。

彼らは背負っているザックの他にも頭の上に大きな荷物を抱えている。恐ろしい体力だ。

思いの外、道は想像以上に整備されていて難なく歩ける。トイレもポイントポイントに設置されていた。

ジェームスの友達のポーターさん。羨ましい体つきだ。

ジェームス撮影。ポーチを抱えすぎ。

なんたってこれから五日間、ジェームスとは一対一だ。

歩きながら色々な話をした。プラベートなことも拙い英語でたくさん話した。ジェームスはペラペラだけどね。

彼は三ヶ月だけ神戸大学に留学してたこともあり、やたらふざけて「ナンデヤネン」とおどけた。なんと日本人の可愛い彼女もいた(スマホの待ち受けにしてた)

そんな彼に聞かれた。

「ミノールは日本のどこが好き?」

この質問には答えれなかった。

・・・どこが好きか?

便利なところ?家族や友達がいるから?

どこが好きなんだろう。というかそもそも好きなのか。当たり前に日本で生まれ育ち、海外の国とそういう目で比較したことなかったから答えれなかった。

「その質問は・・・難しいね・・・」

「難しい?なんでだ?」

「なんでだろうね。よくわかんないや」

「逆にジェームスはタンザニアのどこが好き?」

「このキリマンジャロと自然」

ちくしょう、こいつ即答しやがった。

この話はほんとに今でもずっと引っかかっていて、たまに考えるけど答えはでてない。ただ、別に日本が好きなわけじゃないんだろうな、とも思う。

仮に今、お金とか仕事とか言葉とか、何の心配もなく自由に好きな国を選んで住めます。さあ、どこにする?

って言われたら別の国を選ぶ気がする。

やっぱり難しい質問だよ。

やがて弱い雨が降って来た。上半身だけレインウェアを着込みザックにカバーを装着する。

およそ四時間くらい歩いただろうか。

どうやら今夜のキャンプ地に到着のようである。初日の慣らしには程よい移動時間だったのではないだろうか。

彼はウェイターのジョニー。

まずは小屋で受付を行う。

名前や国、パスポートNoなどを記さなければならない。

その帽子、可愛すぎるだろ。ずるい。

テント場。

ルートが同じ他のツアー会社もたくさんいるのでたくさんのテントが並ぶ。

受付を終えるとすでに僕のテントは組まれていた。

そうなのだ。ポーターの方は僕らより遅く出発し、僕らより早く到着してテントを立てておいてくれる。至れり尽くせりなのだ。

潜るように中に入ってみる。広い。日本では、いつも一人用のテントなのでぎゅうぎゅうだけどこれは二人か三人用のスペースがある。

しばらくするとお湯が運ばれてきた。これで顔や身体を拭いたりするためだ。もちろん風呂なんてありません。

やがて夕暮れ時になった。そろそろ夕食の時間かな。

ジョニーがなにやらテントにマットを敷いてまた出て行った。何これ?何が始まるんだろう。

そしてケチャップなどの調味料やインスタントコーヒーなど一式が用意された。そう、これはテーブルスペースなのである。

最初、ウェイターって何!?と疑問だったのだが、こうやってテントに食事の用意をしてくれる役割だった。もちろんポーターも兼ねているが。

気になって外をのぞいてみる。

後ろのグリーンのテントが共通の調理専用テント。中で料理をしている。そのできた料理をジョニーが僕のテントへ運んでくれるというわけだ。

お湯が運ばれて来たのでキリマンジャロティーを飲んでみる。

あっ、美味い。少し冷えてきた身体にあつい紅茶が身体を温めてくれる。

そうこうしているうちに料理が運ばれて来た。まずはパンとスープ。

マーガリンのようなものもあったのにパンにはそれを塗りたくる。

なんのスープか忘れたけど、これも美味かった。身体が塩気を欲している。

そして肉とポテト。

ちょっと待って。量多くない?

 

そして食後はデザートも出て来た。アボカドはこっちではデザート。

正直食べきれない。申し訳ないが残してしまった。

食事を終えるとすでに夜。

僕は日本から持って来ていた三脚とカメラをセッティングした。この三脚がなかなか重い。空港の手荷物の重さ制限に多大な影響を及ぼすのだが、こればっかりは欠かせない。星空撮影は山での大きな楽しみの一つだ。

今日は少し雨が降ったが幸い夜は晴れた。星は生きているかのように点滅してきらめいている。

肉眼でも天の川が見える。

背後に少し顔を覗かせているキリマンジャロ。

もっと遅い時間になった方が月の位置が変わってより星が瞬くだろうが、早めに寝ることにする。

ジェームスと明日のスケジュールを打ち合わせて、僕は広いテントで快適に眠りに落ちた。登山初日はこうして終わった。

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