[アフリカ]いつかキリマンジャロでコーヒーを

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コーヒーが好きだ。

一日に飲んでいる量を言ってしまうと怒られそうな気がするくらい飲んでいる。

中でもキリマンジャロコーヒーが好きだ。すっきりと飲みやすい。

なんて通ぶってしまったが、まだ豆を挽くレベルには達していない。もっぱらコンビニコーヒーかドリップコーヒーだ。

家にはドリップのキリマンジャロが常備してある。

話は変わるが、僕は山登りも好きだ。

そのせいもあって、僕はデイリーポータルZの中でもこの記事が大好きだ。

モンブランの山頂でモンブランを食べている場合じゃなかった

読んだ当初はとんでもねえ人がいるものだなとたまげた。シンプルな企画に反してこれを実際に行う大変さは容易に想像がつくからだ。

僕もいつかこんなことしてみたいとずっと思っていた。

今年の夏休み、どこか海外の山に登ろうと色々と調べていた。その結果、キリマンジャロは僕の登山スキルでもいけそうだと分かった。

こりゃいっちょ、僕もオマージュとして、キリマンジャロでキリマンジャロコーヒーを飲んでやろうではないか。

そんなわけでキリマンジャロのあるアフリカ、タンザニアへ行ってきた。

アフリカに到着

タンザニアのキリマンジャロ空港。当たり前のことを言うがとても遠い。

空港から「モシ」という街へ向かい、ホテルでツアー会社の人と軽く打ち合わせる。着いたばっかりだがいきなり明日から登山が始まる。

ホテルのベッドには蚊帳が備えてある。初めての蚊帳に少し興奮した。

よっしゃ、絶対登頂するぞ!なんてテンションは上がっていたが、ホテルで荷物を整理していて気がついた。

日本にキリマンジャロコーヒーを忘れてきてしまった。

コーヒーはインスタントのタイプでないと山で飲めないのではないか?と危惧していたのであらかじめ日本で準備していた。

これを持って行こうと思っていたのだ。

しかし、見事に家に忘れてきた。

早速、明日の朝から登るのでおそらく登山前にコーヒーを買える可能性は低いだろう・・・。

おいおい、登る前に企画が崩壊してしまったぞ。

朝、ホテルにガイドさんたちが迎えにきた。チョコなどの補給食を買うために途中で商店には寄ったが、テンパっていてコーヒーを買う余裕はなかった。(後で思ったがこの時、多分買えたはず)

全ては忘れた自分の責任だ。仕方がない・・・。

 

キリマンジャロ登山について

登山に関する道具はほぼすべてがレンタルができる。僕はそのつもりでかなりの軽装でやってきた。

巨大なザックに寝袋や防寒着など必要なものが詰め込まれていく。

靴だけは試し履きをして入念に選んだ。靴擦れは侮れないのだ。

ここでキリマンジャロ登山について、少し説明しておこう。

標高は5895m。アフリカ大陸最高峰である。

基本的にツアー会社を通して、ガイドさんなどをつけることが一般的。一人で行って登れるのかは不明だ。

僕の場合は、ガイドさん、コックさん、ウェイターさん?、ポーターさん(三人)の計6人がついた。

これはなんと僕一人に対してだ。これはツアー客の人数やツアー会社によって変わると思う。

登るルートはいくつかあるが、「マラングルート」か「マチャメルート」を選ぶ人が多いだろう。

ハットと呼ばれる山小屋に泊まりながらストレートに頂上を目指すマラングルート。テントに泊まりながらゆっくり登るマチャメルート。

マラングルートで登る人が多そうだが、僕はテント泊が好きなのと往路と復路で違う道を歩けるマチャメルートを迷わず選んだ。

ここがマチャメルートのゲート。

入山料の支払いなど、手続きが済んだらいよいよ登山スタートだ。

スケジュールをざっくり言うと、四日間かけてゆっくり高度順応をしながらベースキャンプへたどりつく。ベースキャンプは、頂上にほど近い最終キャンプ地のことだ。

そしてその四日目の夜に山頂へアタックし、頂上で日の出を拝んで下山。

これで五日間というわけだ。日数はツアー会社に相談すると長くもできるらしい。

ちなみに僕は日本の山では二泊三日が最長。こんなに長い日数の登山は初めての体験だ。

ガイドのジェームス。見ての通り好青年。ちなみに日本人の彼女がいる。

僕は一人でのツアー客だったのでジェームスとは五日間マンツーマン。そりゃ必然的に仲良くなる。拙い英語を駆使してプライベートな事までいろんな話をした。

道は整備されていて歩きやすい。トイレもきちんと点在する。

キリマンジャロ登山なんて、それはもう険しくて大変じゃないの?と思う方もいるだろう。僕も調べるまではそう思っていた。

もう、これはぶっちゃけて言ってしまうが、登山として歩くという観点からすると日本の名だたる山の方がはるかにきつい。日数もあるので、余裕をもって歩けるし。注意するのは高山病だけだと思う。

そして、驚くべきはポーターさんだ。

よくアフリカの映像で、頭の上に果物を抱えて歩く人を見たことがあるだろう。

実際に見るとそのバランス感覚に驚く。

登山でも馬鹿でかいザックを背負ったうえで、さらにめちゃめちゃ重い荷物を頭の上に抱えザクザク進んでいく。圧巻である。


みんな多くの荷物を抱えながらも元気に登っていく。

ガイドさんはずっと僕と一緒に歩くが、ポーターさんたちは僕らより後に出発して先に次のキャンプ地に着く。駆けるように山を登っていく姿は衝撃を受ける。

僕がキャンプ地に着く頃には既にテントは張られているのだ。

テントに着くと顔や身体を拭く用のお湯が運ばれてくる。ありがたい。

 

キリマンジャロコーヒー、飲める?

ご飯時になると、ポーターも兼ねたウェイターさんがテントの中に食事スペースを作ってくれる。

調味料と飲み物の粉。至れり尽くせり。

くつろいでいるだけで食事が運ばれてくる。実家かよ。

コックさんが調理専用のテントで料理を作る。それをウェイター役の人が僕のテントまで運んでくれる。洗い物もしなくていい。昼はランチボックスを持たされることもあるが、これが基本的に三食続く。

緑のテントが調理場。その周りでウェイターさんが洗い物や準備を行う。

山のなかでもこんな暖かい料理が食べれるとは。

あっ!用意された中にコーヒーがあった!

でも、アフリカフェって名前だ。どこにもキリマンジャロコーヒーとは書いていないし・・・。

果たして、これをキリマンジャロコーヒーと呼んでいいものかどうか・・・。

あっ!でも、キリマンジャロティーならあるじゃないか!

キリマンジャロでキリマンジャロティーが飲めるぞ!

これがキリマンジャロティーか・・・。

紅茶ってこんなにうまかったっけ?

五臓六腑に染み渡るとはこのことか。冷えた身体に暖かい紅茶がたまらない。

キリマンジャロでキリマンジャロティーを飲めた。コーヒーが好きなくだりを無碍にしてしまった気もするが、これで目的は達成したことにしておこう。うん。

 

絶景ばかりの登山

登っている最中はどこを見ても絶景が続く。ダイジェストとなるが雰囲気が伝われば嬉しい。

こんな道ならどれだけ続いても苦ではない。

山に登る人は、こういう道を「楽しい」と思ってしまう病気にかかっている。

正面にキリマンジャロを捉える。大き過ぎて距離感がつかめないが、まだかなり遠い。

みんな陽気で明るい。隙あらば歌い出すし、踊り出す。

別のツアー会社の団体さんも同じルートで登っている。キャンプ地は登山客と付随するポーターさんたちなどで賑わう。

渓谷の間のキャンプ地。ここは絶景だった。

餌を求めてキャンプ場には常にいるカラス。日本のカラスとの違って首だけ白い。鳴き声が豚みたいだった。

疲れてからではなく、疲れる前にこまめに休憩を入れるのが長く歩くコツ。

山に入ってから早寝を心がけていたおかげかもしれない。全てにおいて、日本にいるときより体調が良かった。心配していた高山病の兆候も全くない。うまく高地順応ができたみたいだ。本番に強い自分が嬉しかった。

そのせいもあって僕の歩くスピードは少し早くなりがちだったようだ。

そんな時、ジェームスは言う。

「ミノール、ポレポレ」

ポレポレとはスワヒリ語で「ゆっくり」という意味だ。

そうなのだ。ポレポレでいいのだ。ポレポレで。

街の灯りが綺麗だった。

夜のテントの光、大好きなんです。

天気にも恵まれ、こんな星空を毎晩みていた。贅沢だ。

 

いざ、頂上アタック。

ベースキャンプとなるバラフキャンプという場所。

いよいよ最終のキャンプ地である。ここで標高4673m。

ということは山頂アタックでは一気に1200mくらいを登ることになる。かかる時間はおよそ6〜7時間。明らかにここまでの行程とは異なる。こりゃ、ちょっとしんどいぞ。

いよいよか・・・と緊張してるが、綺麗な夕日が心を落ち着かせてくれる。

夕食後、数時間の仮眠をとる。この仮眠はとても重要だ。無理矢理にしっかり寝た。

そして深夜0時。いよいよ登頂へ向けて出発する。

不要な荷物はテントにおいていくのでザック自体は軽い。

だいたいスタート時刻はみんな同じなので、最初は少し渋滞する。富士登山みたいだ。

しかし、やがてペースの違いにより自然にバラけた。

ヘッドライトが頼り。自分の足元しか見えない。

ジェームスはこまめに

「ミノール、アー・ユー・オーケー?」と聞いてくれる。

最初こそ「オーライ!」と元気に返していたものの、やがて「・・・オーライ」と覇気がなくなり、僕の方から「ジェームス・・・ストップ」と休憩を求めるようになった。

頭が痛いわけではない。

ただ、かなり頭がボーっとしている。自分がここに足を出そうと思った箇所と、実際に靴が着地する場所がずれる。

上半身の安定がなくなってフラフラしている。眠い。頻繁にあくびが出る。

脳と身体がうまく繋がっていない。酸素が薄いとこんなことになるのか。初めて経験する感覚だ。しかし気力はあるから大丈夫、のはず・・・。

ふいに眼前に現れる標識。ステラポイントという場所だ。ここまで登れば、一段落。あとはぐるりと回り込んで山頂にたどりつくはず。

だが、あたりは暗闇。ゴールを知りたい。あとどれくらい歩けばいいのかわからないのが本当に辛い。あと何分で着くのか。どれだけ脚を動かせばいいのか。

気づくと道は雪道に変わっている。つららが逆さに立っているような隙間を縫って歩く。

ほんの少しバランスを崩した。こんなの普段ならなんてことなく踏みとどまれるのだが、身体が全然言うことをきかない。重心に任せるまま体が傾く。

倒れる!

その瞬間、ガシッと後ろから力強く支えられた。僕のすぐ後ろを歩いていた欧米のでかい人だった。ほんとありがとう。あぶなかった。

そして・・・

ついに山頂に到着!

ガイドのジェームスと。寒すぎてフェイスマスクが外せない。

なんと僕はこの日、山頂に一番乗りだった。フラフラしながらも登るペース自体は早かったみたいだ。

思わず喉から叫び声がこみ上げる。ジェームスも、さっき助けてくれた欧米の人も、そのガイドさんもみんな抱き合ってお互い頂上までの健闘を称え合う。

不思議なものだ。先程までぼーとしていたはずの頭がクリアになっている。

ジェームスがニヤつきながら冷やかしてくる。「ミノール、泣いてるだろ?」

くそう。ちゃっかり見てやがった。

雲海からの夜明けを待つ。

温暖化で山頂の雪は減りつつあると聞いた。奥に見えるのはメルーという山。

寒い。シャッターを押しやすいように手袋を外すと、一瞬で指が動かなくなる。

きた。日の出だ。

もうここで感無量なのだが、山っていうのは登ったら降りないといけないらしい。当たり前だ。

長居をするのも寒くてつらいので早々に下山開始。

明るくなったので分かったが頂上付近はこんな道だったのか。刺さる硬さではないが、ここで倒れたらさぞ痛い思いをしていただろう。

砂走り。富士山を登ったことがある人ならこの感じ、分かるかもしれない。

ベースキャンプまで降りてくるのはあっという間だった。登りであれだけ苦労したのにな。

キリマンジャロまとめ

自分なりにモンブランの記事へのオマージュと意気込んでみたものの、そもそもモンブランとキリマンジャロでは登山レベルが桁違いなので随分おこがましい。それでもキリマンジャロティーが現地で飲めたので自分の中では良しとしたい。

読んでいただいて分かる通り、今回、僕の感想は「大名登山」だったなという事。

重い荷物はポーターさんが持ってくれる。テントの組み立ても片付けも必要ない。待っているだけで食べきれない量の食事も出てくる。

もちろん、それなりに登山費用は払っているだが、この初めての登山スタイルにどこか心のモヤモヤはある。そのモヤモヤの原因はあんまりうまく説明ができない。

「自分のことは自分で行うべきではないか」というような違和感は常にあった。そういうもんだ、といえばそうなのかもしれないが、やはりあくまで登山「客」に過ぎないな、と身にしみた。

それでもやっぱり無事に頂上に立てたことは本当に嬉しかった。いざ、ここまで来て山頂まで行けなかったではさすがに悔いがのこる。

あの山頂からの景色と酸素が薄くて経験した感覚は身体が忘れないだろう。

コーヒーは日本に忘れてきたけど。

 

下山後、街でちゃんとキリマンジャロコーヒーは味わった。

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